2023年7月26日水曜日

The Goemon bath

老婆に案内されて曲がりくねった暗い廊下を歩き、いったん土間におり風呂場に入る。浴槽は五右衛門風呂で底板が湯に浮き上がっていた。枯葉の燻る匂いが浴室に漂っている。暗い裸電球で湯に浸ったまま室内を見回す。樹皮を剥いた松の壁板は茶褐色に黒ずみ天井は茶言風の船底型で杉の皮が張りめぐらしてある。掛湯の音さえ気が引けるほど物音一つせず空気が濃密に裸体に迫ってくるようであった。鉱泉なのか石けんの泡が立たない。慣れぬ五右衛門風呂だったが風雅溢れる湯浴みに一日の疲れが消えて行く思いがした。